格安SIMとして競合となる IIJmio に対する実際の利用者の評価はどのようになっているのでしょうか?
mineoで比較検討した のと同様に契約者数の推移を見ていきたいと思います。契約者数の推移を参考とする理由ですが、契約者数の推移を利用すれば、実際の利用ユーザ個々人の個別事情が加味されたミクロな評価は汲み取れないものの、逆にマクロな数字として大きな傾向を把握し、全体感としての評価を捉えるのには、より適していると考えられるからです。
IIJ の契約者数の推移
個人向けのMVNOサービスであるIIJmioのサービス提供に関して、これまでの契約者数の推移をまとめると、以下のような感じになります。
IIJmio 契約者数の推移の傾向
各会計年度の連結業績説明会資料や、IIJのIRのページからダウンロード可能なデータブックを参照して組み合わせたグラフが、上で作成した契約者数の推移のグラフとなります。
推移のグラフから読み取ることができる具体的な傾向としては、以下の点が挙げられます。
2014年度後半~2016年度中盤程度までは四半期ごとにコンスタントに7万回線~10万回線ずつ契約回線数が増加。
直近の4四半期の回線数の増加は微増で、一時期と比較すると増加スピードは鈍化。
特に、グラフ上で最終クォーターとなる2017年度2Qの回線増加数は0.6万件と、ほぼ横ばい状態。
契約者数の伸びと IIJmio に対する評価
格安SIM事業者としての参入時期としては、比較的先発組に位置づけられるIIJmioです。格安SIM事業者の草分け的存在として、格安SIMの黎明期から業界を引っ張ってきている事業者です。格安SIM事業開始以降、右肩上がりで契約者数は増加し、一時期の増加率は前年度比で100%以上の増加率をも誇っていましたが、直近の増加傾向のみに着目すると、息切れ感は否めない印象です。
そもそも100万契約程度の契約者数がすでに存在しているところからしても、それだけ信頼されていることの証しということは言えると思います。ただ、今後微増ながらも増加傾向を維持できるのか、それとも契約者数が減少に転じるのかについては注目していく必要はありそうです。
法人向けサービスへのリソースシフト
ただ、少し視野を広げて法人向けの契約数にまで目を向けるとちょっと印象が変わってきます。下のグラフはIIJの個人向けの回線数だけでなく法人向けの契約数も加味した契約数の推移を表しているグラフです。
このグラフを参照すると、先ほどの個人向けのモバイル回線のみのグラフとはずいぶん異なり、直近の4四半期においても順調に回線契約数を増加させていることが見て取れます。2017年9月末には個人向けと法人向けの回線数合計で200万回線を突破しており、順調に契約獲得が進んでいます。
これらの2つのグラフから判断すると、明らかに
個人向けマーケット → 法人向けマーケット
へと事業リソースをシフトしていっていることが想定されます。実際、プレスリリース文中にも、
「法人モバイル分野においても、スマートデバイスの活用やIoT関連の普及等もあり、需要が拡大した」
とあり、ともすれば薄利多売のレッドオーシャンに陥りがちな個人向け事業の事業ウェイトを低減させようとしている姿が浮かび上がってきているようです。
国内MVNO市場規模推移と IIJ 契約数推移との相対比較
ここまでは、IIJのモバイルサービスの契約者数の推移を直接見てきましたが、ここからは、MVNO市場規模の推移と比較しながら見ることで別の示唆を得られないか確認していきます。
他の事業者も含めた格安SIM事業の回線契約数の推移
まずは、他の事業者も含めた格安SIMの回線契約数の推移を見てみることにしましょう。
図から見ていただければわかるように、国内MVNOの市場規模は毎年順調に右肩上がりで増加している様子が見てとれます。
なお、上図の回線契約数の中には法人向けの契約数も含まれているため、IIJの比較対象としても、本コンテンツの2番目のグラフ上の数値と比較を行います。
IIJ 契約数推移との相対比較
比較方法
次に、契約者数の推移について相対的な比較を行うために、2016年9月~2017年9月の期間に対して、国内MVNO市場規模とIIJの契約数の伸び率を比較してみることにします。
直近の特定期間での契約数の伸び率を比較することで、IIJの契約者数の伸びが、ただ市場規模の伸びに引きずられる格好で伸びていただけなのか、それとも、市場規模の伸びを上回るペースで契約数を獲得できていたのかを見ることができます。
契約数推移の比較結果と IIJ に対する評価
国内MVNOの市場規模
2016年9月 657.5万回線
2017年9月 934.4万回線
伸び率 前年比42.1%増
IIJ の契約数
2016年9月 157.0万回線
2017年9月 203.9万回線
伸び率 前年比29.9%増
伸び率を比較すると、該当期間のIIJの契約数の伸びは、国内MVNO市場規模の伸びを下回っています。もちろん29.9%増という数字は、それ自体は非常に良い数字ではあるのですが、MVNO市場規模の伸びには残念ながら追いついてはいません。ただ、比較の静止点である2016年9月時点のIIJの契約数が既に157万回線も存在しているため、そこから国内MVNOの市場規模の1年間の増加率42.1%と同じ契約数を積み増そうとすると、66.1万回線もの回線契約を獲得する必要が生じます。おそらく、いたずらにシェアだけを追わずに利益率等も加味しつつの結果と思いますが、今後も引き続きこの傾向が継続していくのか注目していく必要はありそうです。
まとめ
中長期のスパンでは契約者数をある程度伸ばしている IIJmio。直近での増加傾向には急ブレーキがかかっているものの、これまでの申込みの結果として相当数の既存契約が存在している事実からすると、一定以上の評価を実際の利用者から得られていると考えても良いのではないでしょうか。