無線LANチャネルの干渉 |使用時の諸症状の改善

自宅でノートパソコンやスマートフォンを利用する際に、無線LANを利用しているかたもそれなりにいらっしゃることと思います。ただ、今まで快調に無線LANを利用できていたものが、急にブツブツと通信が切断されたり、急に通信スピードが遅くなったりしたような経験があるかたもいるのではないでしょうか。

自分自身としては特に設定とかをいじった覚えもなく、「ちょっと急に困るんだけど!」と言ってみたところで事態は一向に改善する訳もなく。。。

こうした症状はどうして急に発生するのでしょうか?そして、いったいどうすれば改善できるのでしょうか?

この記事では、そういった無線LANのつながらない、つながりにくいといった場合の改善方法を紹介します。

具体的には、無線LAN設定のチャネルと呼ばれる部分を最適化することにより無線LANの電波状態を改善する方法を紹介します。

なお、無線LANがつながりにくいという症状は、原因がいろいろと考えられるため、チャネルの最適化で症状が改善するかは一概には言えずケースバイケースのところもあるのですが、解決策となる可能性もあるので、ぜひ試してみてください。

 

なぜ急に無線LANがつながらなくなったりスピードが遅くなったりするのか?

最初に、なぜ無線LANが急につながらなくなったりスピードが遅くなったりするのか、チャネルの観点から説明していきます。

無線LANの電波の通り道には決まったレーンがある

無線LANの電波の通り道には、周波数の決まった通り道チャネルの決まった通り道があります。それぞれについて説明していきます。

周波数の決まった通り道

無線LANで利用できる周波数帯は決まっていて、以下の2つの周波数帯のいずれかである必要があります。

2.4GHz帯(GHz・・・“ギガヘルツ”って読みます)

5GHz帯

無線LAN 2.4GHz帯イメージ
無線LAN 2.4GHz帯イメージ
赤枠で囲っている箇所が無線LANの2.4GHz帯で利用している周波数帯となる。
出典:電波利用ホームページ(総務省)(http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/use/index.htm)を加工して作成(クリックで拡大)
無線LAN 5GHz帯イメージ
無線LAN 5GHz帯イメージ
赤枠で囲っている箇所が無線LANの5GHz帯で利用している周波数帯となる。
出典:電波利用ホームページ(総務省)(http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/use/index.htm)を加工して作成(クリックで拡大)

上のイメージのように、無線LANで利用できる周波数帯は総務省で管理をしています。
細かくいろいろと書かれていますが、帯で書かれているのが周波数の広がりで、上のほうのイメージの左上端の960MHz帯からスタートし、下のほうのイメージの右下端の10000MHz(=10GHz)まで、それぞれの周波数帯がどういった利用用途で使用されているのかを図にしているものです。
難しい用語が数多く並んでいますが、私たちに馴染み深いところとしては、水色の帯で何か所か塗られている部分が、携帯電話(もちろんスマートフォンも)で利用されている周波数帯の電波になっています。

関連リンク:総務省 電波利用ホームページ

なお、2つの周波数帯で利用できる無線LANの通信規格は公式に決まっています。

2.4GHz帯

  IEEE802.11b

  IEEE802.11g

5GHz帯

  IEEE802.11a

  IEEE802.11ac

このほかにも

  IEEE802.11n

という通信規格もありますが、これはどちらかというと、いかに通信を高速に効率的に行うかという観点での通信仕様をまとめたものであり、周波数帯とは分けて考えてもいいかもしれません。(別の言い方をすると、ルータなどの機器が対応していれば、IEEE802.11nは2.4GHz帯と5GHz帯の両方で利用可能です。)

通信規格ごとの利用可能な周波数帯
通信規格ごとの利用可能な周波数帯

無線LANルータなどにもこれらの通信規格の表記がされていると思います。古い無線LANルータなどでは記載が無い規格もあるかもしれません。

チャネルの決まった通り道

実際の無線LAN通信を行う際には、それぞれの周波数帯の中でも更に電波の通り道が細分化されていて、その細分化された通り道のことを“チャネル”(channelのこと。“ch”と略したりします。)と呼んでいます。無線LANルータを利用して自宅内でスマートフォン等を利用する場合は、無線LANルータ側もスマートフォン側も同じチャネルを利用することで無線LAN通信ができるようになります。

チャネルは、周波数帯ごとに利用できるチャネルが分かれています。

2.4GHz帯で利用可能なチャネル

1ch~14chまでの14チャネルが用意されいます。
(細かくみると、11bと11gで利用可能なチャネルは差があります。(11gのほうが利用できるチャネルが1つ少ない)。具体的には14chが11gでは利用できません。一般的に利用するチャネルに限定すると、1ch~13chの13チャネルから利用することになります。)

無線LANの2.4GHz帯のチャネルごとの周波数利用イメージ
無線LANの2.4GHz帯のチャネルごとの周波数利用イメージ(クリックで拡大)
5GHz帯で利用可能なチャネル

利用可能なチャネルは、36ch、40ch、44ch、48ch、52ch、56ch、60ch、64chの8個と、100ch、104ch、108ch、112ch、116ch、120ch、124ch、128ch、132ch、136ch、140chの11個。
両方足して合計19chが用意されています。

実際に無線LANを利用する場合は、この中から1つ(11n等で2つのチャネルを利用する場合は2つ)のチャネルを選んで通信することになります。

ただ、実際に無線LANを利用する場合では、チャネルの設定は無線LANルータ側だけの設定となっていますし(スマートフォンなどの通信端末側では基本的には自動設定される)、無線LANルータが自動的にチャネルを選んでくれますので、意識的に気にしなければ、基本的にはチャネルのことを目にすることはありません。

電波はいろいろな機器と共用しているので混線してしまう

仮に自分の家の敷地が広大で周りに何もないのであれば良いかもしれません、普通は周りにも家がありマンションとかであれば上下左右を家に囲まれていることになります。それでも同じ周波数帯を利用しているのが無線LANの用途のみであればまだ問題は少なかったかもしれませんが、電子レンジなどでも同じ周波数を利用して調理を行っているため、その電波とも周波数帯が被ることになります。

無線LAN 2.4GHz帯イメージ
無線LAN 2.4GHz帯イメージ
同じ2.4GHz帯で、いくつもの用途で電波が利用されている様子が見て取れる。具体的には、「アマチュア無線」と「産業科学医療用(ISM)」だ。電子レンジで利用している周波数も「産業科学医療用(ISM)」に含まれている。
出典:電波利用ホームページ(総務省)(http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/use/index.htm)を加工して作成(クリックで拡大)

無線LANだけの用途に限ったとしても、昔はノートパソコンぐらいしか無線LANを利用する通信機器はありませんでしたが、今となってはスマートフォンや携帯ゲーム機など幅広い用途で利用されてきており、電波が被る可能性はどんどん高くなってしまっています。

チャネルがかぶるとどうなるか?

利用しているチャネルがかぶることは、車が渋滞するのと同じようなものです。同じ道に大量の自動車が一気に通ろうとすると、道幅のキャパを超えてどこかのタイミングから渋滞が発生してしまいます。

同じように、利用しているチャネルはかぶると互いに干渉しあい、通信スピードが落ちたり、最悪の場合では通信が途切れるといった事象が発生する可能性が高くなってきます。

無線LANチャネルの干渉 を改善するためには?

他で利用しているチャネルと重ならないように、チャネルの設定を変更するようにしましょう。

チャネルを自動的に最適化してくれる無線LANルータもある

最近の無線LANルータでは、自動的に最適なチャネルを選んで設定してくれる機種もあります。

無線LANルータの親機イメージ。自動的にチャネルを選んでくれる機能があるため、 無線LANチャネルの干渉 は発生しにくいかもしれない。
無線LANルータの親機イメージ。
写真はBullaloのWHR-1166DHP4。(クリックで拡大)
自動的にチャネルを選んでくれる機能があるため、 無線LANチャネルの干渉 は発生しにくいかもしれない。

手動でチャネルを変更する場合

無線LANルータにログインして、チャネルの設定を変更しましょう。

無線LANにログインするためには、インターネットエクスプローラー等のWebブラウザのURLを入力する欄に、

192.168.11.1

192.168.1.1

といったアドレスを入力してENTERキーを押すと、無線LANルータのログイン画面がWebブラウザに表示されます。(ログインするための実際のアドレスについては機器によって異なるので、無線LANルータに付属している説明書などで確認してください)

WebブラウザにURLを入力する
WebブラウザのURL欄に入力して、ENTERキーを押そう。

ログインIDとパスワードについても、説明書などに記載がありますので、探して入力してください。
BUFFALOの機器の場合は初期ユーザー名/PWの対は、以下のいずれかとなっているようです。(初期ユーザー名/PWから変更している場合はこの限りではありません)

ユーザー名/PW ・・・ admin/password

ユーザー名/PW ・・・ root/(空欄)

BUFFALOの無線LANルータのログイン画面でIDとPWを入力する
BUFFALOの無線LANルータのログイン画面でIDとPWを入力する。画面イメージは、ユーザー名がadminのケース。パスワード欄はマスクされて見えないが、passwordという8文字を入力している。ユーザー名がrootのケースでは、パスワード欄は、空欄のままログインボタンをクリックすることになる。

チャネルを設定できる画面が表示されたとして、では一体どのチャネルに変更すれば電波状況を改善することができるでしょうか?

それを見極めるためには、現在の自宅の周りにおける電波状態を正しく把握することが必要です。

自宅の周りにおける電波状態を正しく把握する方法

それにはアプリの力を利用します。具体的には以前こちらの記事 でも取り上げましたが「inSSIDer」というアプリを利用します。

inSSIDerのWiFiの電波強度測定画面
inSSIDerのWiFiの電波強度測定画面
画面下部に2.4GHzと5GHzのそれぞれの周波数帯でのチャネルごとの利用状況がグラフィカルに表示されている。
例えば、左側の2.4GHzの黄色の山は3chの電波を表しており、山の高さが通信強度を示している。(山が高いほど電波が強い)
※チャネルの見方は、山の真ん中に書いてある数字が利用チャネルとなる。先ほどの黄色の山でいくと、山の左側は1の数字の左側にあり、山の右側は4の数字のあたりにあるが、チャネルとしては中心に書いている数字で識別するため、3chとなる。

上の画面を見ればわかるように、左側の2.4GHzの周波数帯では多くのグレーの山が表現されています。そして、このグレーの山の数だけ、自宅の周りで無線LANの電波が飛んでいることになります!ざっと見ただけでも20ぐらいのグレーの山があり、これだけ多くの電波が飛んでいる状態では、電波が全く干渉しない状態で無線LANを利用することはほとんど不可能です。

無線LANチャネルの干渉をなるべくさせないようにするために、なるべくグレーの山が無いところを狙ってチャネルを設定していくことになります。

上のイメージ行くと、2.4GHz帯を利用し続けるのであれば6chあたりが良さそうです。

もしくは5GHz帯であれば、比較的chは混雑していないようなので、5GHz帯の利用に切り替えても良さそうです。

ただ1点、5GHz帯を利用する場合注意すべき点があります。

それは、利用するチャネルによっては屋外での利用が電波法により禁止されていることです。

具体的には、36ch、40ch、44ch、48ch、52ch、56ch、60ch、64chの8個は屋外では利用することはできません。気象レーダーなどの重要な機器と周波数帯が重なっていることに起因しているようです。

屋内で市販の無線LANルータをそのまま利用している分には問題ないのですが、知識としては知っておいたほうが良いでしょう。

まとめ

無線LANを利用するだけであれば、ルータを買ってきてそのまま電源を入れてもそれなりには利用することができます。ただ、ひと手間チャネルの調整を行うだけで、より快適に無線LANを利用することもできそうです。
もちろん、チャネルの変更を適切に行うためには、事前に周りのチャネルの状況を測定するなどの手間がかかるのも事実なので、ルータが古く最近調子があまり良くないなぁ、といったことがもしあるのであれば、いっそルータ自体を最新機種に買い替えてしまうのも1つの手かもしれません。

少しの手間ぐらいであれば全然問題ないという方でしたら、ちょっとチャネルの設定を確認してみて、1歩先の無線LAN環境を目指してみてはいかがでしょうか。

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